視覚脳波グループ 過去の研究
視覚系は常に膨大な入力にさらされていますが,実はそれらを一度に処理することはできず,視覚的注意によって必要な情報を選択・処理していると考えられています.視覚的注意は,スポットライトのようにある場所に向けられ,その場所にある視覚刺激の処理速度や処理効率を向上させる空間的注意と,色や形など刺激属性に向けられる特徴的注意に分類されます.空間的注意については,その時空間特性の詳細が明らかにされつつありますが,一方特徴的注意については,十分な知見が得られているとは言えないのが現状です.本研究テーマでは,特徴的注意の特性と空間的注意との関連を明らかにすることを目的としています.
脳機能は左右で異なることが知られていますが,物体認識に関する処理においても,その左右局在性が明らかになってきました.例えば,上図の2枚の3次元物体が同じであるかどうか判断する課題に対して,一般に左視野提示(右脳優位刺激)よりも右視野提示(左脳優位刺激)の方が高い正答率を示し,そのときのERPにも興味深い違いが見られました.本テーマでは左右脳半球それぞれの処理メカニズムについて,ERPを指標として解析することを目指しています.
(下図のように回転させると,同じ物体であることが確認できます.)
私たちは認知バイアスについての研究を行っています.例えば,多義図形の一種であるNecker Cubeは図形が右向きと左向きの見え方が可能ですが,多くの人は左向きの図形を認識することが明らかになっています.これは普段の私たちの生活において,上にあるものよりも下にあるものを見る機会が多いことから,Necker Cubeも下に置いてあるような,左向きの見え方をしやすいと言われています.しかし, Necker Cubeの認知と空間的位置の関係を調査した研究はありません.そこで,本研究室ではVRを用いた実生活に近い実験環境を用いることで,生活の中で形成される認知バイアスを調査する研究を行っています.
私たちの瞳孔は,外から入る光の量によって大きさが変わります.しかしそれだけではなく,瞳孔の大きさは感情や興奮状態など様々な要因の影響を受けます.瞳孔の大きさに影響を与える要因の一つに”聴覚的顕著性”があります.聴覚的顕著性は,ある音を聞いたときに,聞いた人にとってその音がどれだけ注意を引くかを表し,同じ音であっても聞く人によって顕著性は異なります.本テーマでは,この原理を用いて,音楽を聞いたときの瞳孔反応から,その人の音楽能力の推定や,認知メカニズムの調査を行っています.