気温マイナス10度というのは,11月のフィンランドとしては寒い部類に入るのだそうです.昨年の冬は暖かかったらしく,雪が残るようになったのも12月に入ってからだったそうでした.今年の冬は厳しいぞ,と友人達は声をそろえますが,特にそれといった根拠は無く,2度続いてそんなに冬が甘いはずがない,といった類の信念によるものです.となると,本格的な冬になると数段威力を増した寒さが襲ってくるということでしょうか?我々にはもう十分寒いのですが.
先日,いつもの友人がサーモンフィッシングに連れていってくれました.バルト海沿岸の街 Kotoka に流れ込む川が目指す釣り場です.行く前日,友人は行くかどうか決めかねていました.というのも,気温があまりに低いと魚の食いも悪いし,釣り糸は凍るし,何より釣り人もつらいからです.天気予報を見てから考えようというのが友人の案でした.彼が提案した基準はマイナス15度以上であること,というものです.なんとも緩やかな基準か,と思いましたが,案の定,気温はマイナス10度,条件クリアとなり,早速釣りに行くことにしました.
釣りをするためには,釣税20FIMと場所代(?)の60FIMが必要でしたが,それなりのことはあって,足場も作られており,ファイヤープレース,調理場(?)もある快適な釣り場でした.とはいえ,マイナス10度の寒さは徐々に体に効いてきます.ファイヤープレースは無ければならないものであると後々知ることになりました.この釣り場ではSiika(マスの一種)とサーモンが狙えます.Siikaは小エビの剥き身を餌にして釣りますが,我々の狙うサーモンは毛ばりのようなもの(おそらくルアーの一種)を使い,冬場は特にそうらしいのですが,サーモンは川底近くにいるそうなので,川底から少し上辺りをその毛ばりを流して狙います.その釣り場はフィンランド国内でもラップランドと人気を二分するほど有名らしく,今年に入って釣れたサーモンの情報がまとめられて掲示されていました.それによれば,今年に入って釣れた10kg以上のサーモンは合計で226匹,最大で22kg,体長120cmとありました.写真も見ましたが,これがサーモンかと思わせるほどの大きさです.ほとんどのサーモンが10kg以下であることを考えれば,相当の数が上がっていることになります.なるほど,この日のようにマイナス10度で,しかも小雪のちらつく天候でも釣り人はいました.
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さて,我々はどうだったかと言えば,友人が一匹サーモンを上げただけで,残念ながら私は釣り上げることはできませんでした.友人が釣ったサーモンも40cmはあったのですが,小さいからといって川にリリースしていました.40cmでも小さいとは,さすが標準が違います.日本で鮭といえば正月の新巻き鮭くらいしか知りませんが,40cmくらいだと,小さい部類に入るものの,十分食べられる大きさなのではないでしょうか?むしろ120cmもの大きさの鮭は,何かグロテスクに見えそうな気もします.日本でもノルディックサーモンが売られていると思いますが,大きさを比べてみるとわかるように,一まわりも二まわりも日本ものよりも大きいです.味も大味ということは無く,非常に美味です.
ただ,朝からずっとマイナス10度の中にいると,足は冷えるし,手先はかじかんでくるし,相当寒さがこたえます.ファイヤープレースには常に火が炊かれ,寒くなるとみんなそこに集まってきます.そして,俺はこんなのを釣ったとか,そのときはどうだったかとか,いわゆる自慢話で盛り上がります.我々が行った日はサーモンはほとんど上がっていませんでしたが,Siikaが数匹上がっていました.50cmは超えていたようです.Siikaは私もスーパーで買って食べてみましたが,私の口には合いませんでした.Siikaの自慢話はそれほど気になりませんでしたが,巨大サーモンを釣ったという人の話を聞くと少々羨ましく思い,よしっと決断してまた釣りに戻り,それでもだんだん寒くなりまたファイヤープレースへ,というのを繰り返していました.実際には釣れませんでしたが,冬のフィンランドの釣りを経験できたこと,寒さが身にしみたこと,などなど,収穫は十分の釣の旅でした.
「今回は残念だったけど,次回は氷上釣りで存分に釣れるから安心しろ.」と友人.彼の親切心にはいつもながら頭が下がりますが,私の体がフィンランド人ほど寒さに強くないことをあまり理解してくれていないようでした.
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