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18. Hiroshima Day in Finland (anniversary of the world's first atomic bombing in Hiroshima)

8月6日は原爆記念日である.毎年,広島で記念式典が行われるこの時期は蝉がうるさく鳴く猛暑の頃であるが,今年はフィンランドにいて,しかも今年のフィンランドの夏は特に雨が多く,涼しかったため,うっかり原爆記念日を忘れるところであった.恥ずかしながらフィンランド人の友人に「今日はHiroshima dayだろ?」と尋ねられて思い出した次第である.この日は広島では原爆の犠牲者の魂を弔うために燈篭が川に流されたように記憶している.長崎の精霊流しもそうであるが,ゆらゆらと揺れる光の集団が川を下っていくのは,テレビでみても美しいものだ.そうした慣習は我々日本人が世界に誇れるものの一つだろう.まさに日本的と呼んでよいのではないだろうか.

実は数年前からフィンランドでも,8月6日の夜に湖にキャンドルを浮かべ,原爆の犠牲者の冥福を祈る行事が開催されるようになった.ここラッペーンランタを含め,ヘルシンキなど数都市で行われるという.我々も早速ラッペーンランタの港に赴くことにした.テレビやラジオによれば夜9時30分から行われるとのことだったので,9時頃港に行ったのだが,ずいぶん日は短くなったというものの,まだずいぶん明るくて,それらしい行事が行われそうな雰囲気もなかった.どうしたことだろうと思っているうちに9時30分になると,どこからこんなに多くの人が現れたのかと思うほど,急に人が集まり始め,しかもきれいな夕焼けが現れ,絶好の条件が整った.誰が設定したのか,9時30分というのは正しい時間であった.

そのうち,おもむろにある男の人がこの行事の趣旨を説明し始めた.隣にいた友人の訳によれば,インド,パキスタンの核実験の話から始まり,今日のこの出来事(つまり原爆投下)を忘れないようにしたい,という趣旨の話だったらしい.そして次々に湖にキャンドルが浮かべられた.ここに原爆被害者の関係者はまずいないと思われるが,何人もの人々がキャンドル手に行列を作っていた.日本のように手を胸の前で合せるような人はさすがにいなかったものの,メーデーのようなお祭り騒ぎではなく,いたって厳粛な雰囲気であった.中にはこの行事の意味を知りすぎているのか日本の紋付き袴を来た若者もいた.その夜は我々日本人家族が特別目立ったのは致し方ないことだが,それでも周りの人が普段とは違う目で我々を見ているような気もした.
 
 

趣旨を説明する男の人
夕焼けに空が染まり,絶好の条件が整う
何人かの日本人も居た
桟橋から静かにキャンドルを浮かべる
やはりフィンランド風(?)
紋付き袴の男性
 

前日の夜には原爆の歴史を振り返る特別番組がテレビで放映されたり,このような行事が行われたりと,やはり原爆の落とされた日本に対する関心は想像以上に高いように思われた.参加されていた人々の年齢層が若者からお年寄りまで幅広かったのも印象的だった.広島で行われる記念式典は世界中が注目しているのである.こういうときこそ世界に恥じない政治家が,世界に恥じないメッセージを発信して欲しいと思うのは私だけだろうか.

8/6/1998

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