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21. Mushroom Pickers

今年の夏はここフィンランドでも長雨で,せっかくのフィンランドの夏を楽しめず残念だねと,よくフィンランド人に残念がられます.たしかに雨は多かったし,気温も夏を感じるほど上がったことはありませんでした.おそらく,ここに来た最初の日,つまり5月1日が最も暑いと感じた日じゃないかと思います.もちろん,よっぽど寒いのではという思い込みによるものですが.雨はたしかに気分を沈ませますが,悪いことばかりでもありません.森に活気を与え,そのおかげで森の恵みを受け取ることができるからです.

8月の中頃から,アパートの周りには様々な種類の茸が目に付くようになりました.日本だと,茸といえばしいたけ,しめじ,そして松茸くらいで(というか,私があまり知らないのかもしれません),しかも家のすぐそばに生えているものといえば,得体の知れないものばかりで(というと失礼ですね),まさか食べようという人はいないと思います.アパートの周りに生えている茸も,そういう意味からすればいずれも「得体の知れない茸」で,しかも,ものによっては非常に大きく,3歳になろうとする息子の顔の大きさほどもある巨大茸もめずらしくありません.というわけで,それらの茸は格好の私の被写体となるのでした.早速,写真を取り,先日買った「茸図鑑」を手にして種類を調べてみましたが,あまりの種類の多さと,違いの微妙なものが多いことから,ほとんど自分で探すのは不可能だと気づきました.そこで,アウトドア志向の強いKarri (サマーコテージに連れていってくれた若者)の助けをかり,何種類かについては判別することができました.その結果わかったことは,アパートの周りにあるからといって,どれも食べられないものばかりではなく,結構食べられるものが多いこと,そしてもちろん,毒性の強いいわゆる「毒茸」も豊富なことです.
 
 

Punaka:rpa:ssieni-Amanita muscaria
いかにも見るからに毒茸ですが,
実際に毒茸です (通称 Fly Agaric).
Tatti-Boletusの仲間
これは食べられそうですが,
実際に食べられます.なるべく若いのが良い.
(恐らく)Haaparousku-Lactarius trivialis
本当にそうであればボイルすれば
食べられるそうです.
Rousku-Lactariusの仲間ではなかろうか?
非常に大きい.手前は直径22,3cmはある.
良く似た毒茸があるので,食べるにはリスク大.
 
茸の本を買って色々本を読み進めているうちに,ますます茸に興味が出てきました.アパートの周りにこんなにたくさんあるんだから,森に行けばさぞかしたくさんあることだろうと期待も膨らみます.一緒に茸取りに行こうか,とKarriは私の心を知ってか知らずか,私を茸取りにさそってくれました.もちろんハイハイと調子の良い返事をしたのは言うまでもありません.残念ながら当日は小雨のぱらつくあいにくの天気でしたが,そんなことはおかまいなしで,息子,家内も一緒に,ごくごく近所の(ここがポイントですが,本当に車で10分も走ると人気の無い森に到着してしまいます)森に茸取りに行きました.自動車道路の脇に車を止め,ちょっと森に入るとやはり茸がたくさんあります.しかしながら,食べておいしい茸となると,さすがにどこでもという具合にはいかず,森をせっせと歩いて探さなければならないそうです.せっせと,とはいいながらもいきなり何種類かの茸を見つけられるのですから,面白いものです.大人は茸に夢中でしたが,子供たちはブルーベリーや赤スグリの実を食べるのに一生懸命でした.
 
 
地面は鬱蒼とした苔に覆われ,
倒木も土に帰っていくような森
家内と息子.森を歩くことに慣れていない
息子は何度もころびましたが,それでも楽しそうでした.
ブルーベリーをほおばる子供たち.
茸はそのまま食べられないためか興味を示さない
例えベテランであったとしても,茸図鑑は必須.
誤って毒茸をとったら大変なことになります
 
2時間くらい森を歩いたでしょうか.バケツに半分くらいは様々な種類の茸を取ることができました.といっても,我々は案内役のKarriの後をついて歩いただけでしたが.Karriも時々,茸図鑑を広げ,食べられる茸かどうかを入念に調べていました.茸図鑑は非常に面白く作られていて,見誤った場合の危険度によって分類されています.つまり,たとえ見誤ったとしても,1.食べられる茸と間違える可能性があるもの,2.食べられない(おいしくない)茸と間違える可能性があるもの,3.若干毒がある茸と間違える可能性があるもの,4.極めて毒性の強い茸と間違える可能性があるもの,という具合に分類されています.1はともかく,4は極めてスリリングです.もちろん自信がなければそのような茸は取りません.毒にも様々な種類があって,上に示したAmanita muscariaなどは,アルコールを飲んだ場合に似た症状を引き起こすらしく,しかも症状そのものはすぐに回復するらしいので,面白がって食べる人もいるとか.もちろん,それを食べると死んでしまうというくらい危険性の高い猛毒茸も生えているので,注意が必要です.それでもみんな茸取りに行くのは非常においしい茸がわりと簡単に取れることと,そもそも森を歩くこと自体が楽しいことによるようです.

ちなみに,フィンランドではどの森であっても茸を取ったりベリーを摘んだりするのは全く自由です.たき火など,火をおこす場合や釣りをする場合には許可が必要なのですが,森の恵みは国民が平等にその恩恵を受けるべきだという考えが基礎にあります.日本のように,どこかの山を買い占めて,松茸で一もうけしようというような発想はこの国には無いのかもしれません.

8/30/1998
 
Lehma:ntatti-Leccinum scabrum
tattiというのは太いという意味だそうです.
Haaparousku-Lactarius trivialis
ボイルすれば食べられる
Karvarousku-Lactarius torminosus
食べる前にボイルする必要あり
Kantarelli-Cantharellus cibarius
最も有名な茸の1つ.マーケットでも売っている.
不明.これも茸の一種らしい.
Punaka:rpa:ssieni-Amanita muscaria
これもあちらこちらに生えている
 


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