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11. サウナ

新しいフラットに引越しして何よりも嬉しかったことの一つが,家族みんなでサウナに入ることができることです.毎週火曜日は女性と男性に別れて入る,いわゆるpublicサウナなのですが,これとは別に毎週土曜日の夜8時30分から我々家族専用のサウナタイムが割り振られています.私も家内もサウナ経験者なので,この日を待ち望んでいました.問題は2歳半になる息子です.こいつが拒否権を発動すると,せっかくのサウナタイムもだいなしです.家内か私のいずれかがサウナに入れなくなってしまいます.

フィンランドでは1歳にも満たない子供もサウナに入ります.子供の方がむしろサウナが好きだという話も聞いていました.注意すべき点は,焼けた石に水をかけ,蒸気が立ち上るときにぐっと暑くなるその瞬間を子供は予測できないので,それで驚いてしまう場合がある,ということです.ですから,なるべくサウナの部屋の下の方に座らせ,急激な温度変化から子供を守ってやる必要があります.

そうした注意事項を頭に入れて初めて家族でサウナに挑戦しました.部屋そのものが小さいので,人の出入りで部屋の温度は結構下がります.我々が最初入ったときは80度くらいでしたから,ぜんぜん低い温度です.息子もそのときはきゃっきゃとはしゃいでいました.早速,水を焼けた石にかけ,部屋の温度を上げると,最初はジューという音が面白いのか,楽しんでいましたが,しばらくして暑い蒸気が来た瞬間,彼はギブアップの手を上げました.両親が快感に浸っているものですから,ひたすら「がまんしろ」で押し通しましたが,鼻がやけるだの,顔が暑いだの,文句ばかりです.その日は結局大人もあまり満足できないまま終了です.

こんなことでは,厳しい冬を乗り越えられない(というか,両親が楽しめない)ということで,息子のサウナ特訓が始まりました.数日後,public timeに息子を再度連れて行き,急激な温度変化が苦手なんだろうと思い,今度はまず部屋をしっかり暖めておき(90度〜100度),その中に息子を抱えて入れました.この方法でしばらくもったのですが,それでも暑い暑いと嫌がります.よくよく息子の話を聞いてみると,暑いのは顔だけで,体の方は大丈夫とのことです.そこで今度は水に濡らしたタオルを顔に当て,その状態でサウナにチャレンジしてみました.結果は上々です.十分汗が出るだけの時間,がまんすることができました.もちろん,我々のペースに比べればまだまだサイクルが短いのですが,それでも両親が交代しながらうまくサイクルを調整すれば,大人も子供も思う存分サウナを楽しめます.実は,息子がこれほどがまんできるようになったもう一つの理由があります.それは,同じ年頃の女の子(ヴェンディーと言います.かっこいい!)もサウナが好きで,彼女は大人と同じペースでサウナを楽しむことができるそうです.彼女はサウナを楽しんでいるぞ,お前に出来ないはずはない,と言ったところ,息子は努力するようになりました. 物事の動機というのは大体そんなものですが,それでも息子にとっては重要なポイントでした.

ヴェンディーはお母さんとpublic timeにサウナに入るそうです.したがって息子も家内とその時間にサウナに行けばヴェンディーに会えます.息子はその日を楽しみにしていますが,残念ながら彼女は現在,実家(チェコ)に帰っています.あと一週間もあれば帰ってくるそうなので,いよいよ息子の夢も近々実現します.ただ,家内が一度public timeに一人でサウナにいったとき,おおくのご婦人方がサウナにいたようで,彼女がサウナの入り方を指導されたそうです.その入り方というのがすさまじいものらしく,部屋は息も出来ないほど暑くするそうで,家内は2度サウナに入ったところで,ギブアップしました.「これが本当のサウナなのよ」と言ったとか言わないとか(フィンランド語なので想像です).それにしてもフィンランドのご婦人方(70歳以上らしい.一人は76歳だったとか)は全く強靭です.特訓中の息子でもさすがにご婦人方の入る時間とはずらした方が良いかもしれません.

6/13/1998 
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