日本でもそうですが,フィンランドでは特に携帯電話が普及しています.私が会った人のなかで持っていなかった人はチェコから来ているPh.Dの学生一人でした.それ程携帯電話が普及している理由は,フィンランド経済を支えていると言ってよいNOKIAがせっせと携帯電話を作っていること,日本に比べて通話料金が安いこと,あとは推測ですが,しばしば外で散歩したり,アウトドアスポーツにいそしむ国民としては,携帯電話が便利なのかもしれません.
こちらに来て,やはり電話がないのは不便だということで,早速電話を買う計画を立てました.もちろん,いわゆる普通の電話(fixed line)も候補の一つでしたが,いま借りているアパートを引越しする予定であること,引越しするたびに回線を引くためのdepositを取られること,などから,結局,携帯電話にすることにしました.
私は日本で携帯電話を使っていなかったため,そもそもどんな種類があって,どのようなものが使いやすいのか,といった予備知識は全くありませんでした.そこでまわりのフィンランド人に聞いてみると,やはり携帯電話好き(?)な人がいて,どこのどういったモデルはどうで,どこのなんとかいうモデルはここが良い,としっかり説明してくれました.私としては,それほど機能は必要ないし,使う予定もないので,電話としての機能とコンピュータに繋ぐことができればそれで良いのですが,とにかくまず私の話を聞け,といった剣幕で,しっかりレクチャーされました.
聞くに値した内容としては,ヨーロッパではGSMというディジタルシステムが確立されていて,加盟しているほとんどの国で携帯電話を使うことができるという点です.つまり,日本でいう「何とかドコモ」に加入していれば,韓国に行っても,中国に行っても自分の携帯電話が使えるようなものです.これには,さすがに驚きました.もう既にご存知の方もいらしたかもしれませんが,私は初耳でした.さらには,サテライト電話も売っていて,おそらくそれは世界中どこでも使えるのでしょう.違うかもしれませんが.
なるほど,と納得した私は,適当なカタログを友人からもらい,あとは値段を見ながら機種を検討することにしました.ここに来て色々な人の携帯電話を見てきましたが,日本で見るような機種に比べ,ずいぶん大きくて,それほどかっこ良くないな,とは思っていましたが,それよりも価格がずいぶんと高いことに驚きました.定価では最低でも3万5千円から4万円はします.売れ筋となると6〜7万円もするではないですか!日本では,ほとんどただと聞いていたので(もしかしたら,それはPHSのことかもしれませんが),これには面食らいました.まあ,仕方がない,ということで,昨年の夏に出た人気モデル(定価で2,650FIM, 6万7千円弱)を1,850FIM(4万6千円)で買うことにしました.あと,これにコンピュータに繋ぐためのキットが1,100FIM(2万7千円)で,合計7万円の出費になりました.
ただ,高いだけのことはあるな,と思ったことは,昨年頃から日本でも知られてきた電話によるメッセージング(ここではsmart messagingと呼ばれています)がほとんどの機種でできること,どうやるのかわかりませんが,Faxの受信,送信ができること,機種によってはwebのページを電話だけで見ることができるらしいこと(実は私の買った携帯電話もできるらしいです)等々,何やら様々な機能が満載されているようです.つまり,電話の中にすでにモデムが内臓されていて,コンピュータに繋ぐ場合もケーブルをCOMポートに差し込めばOKという仕組みです.まだ私は試していませんが,これで簡単にダイアルアップ接続ができるはずです.
あと,日本でもそうですが,回線と電話機はもちろん別々の会社が扱っているのですが,回線を開くと電話番号や個人名などの情報が書き込まれたICカードのようなものをくれ,それを電話に差し込むことで,電話が使えるようになるというシステムです.ですから,そのICカードを違う電話に差し込めば,即座にその電話を前と同じ電話番号で使える,というわけです.おそらく日本ではこれとは違うシステムなのではないでしょうか?
ところが,回線を開こうと店員に頼むと,君は外国人だから開くためにはdepositとして3,000FIMが必要だ,と言うではないですか!どういう意味だ,と聞いてみると,最近,ロシアから来た外国人が携帯電話を買って,さんざん使ったあげく,回線使用料も払わずとんずらするケースが増えている,というのです.それにしても,3,000FIMは高いので,他の方法は無いのかと聞いてみると,回線のオーナーをフィンランド人にして,ユーザーを私にすれば,そうしたdepositは必要でないということを教えてくれました.そこで早速,大学に戻り,この件について相談したところ,大学そのものがオーナーになってくれることになりました.何やらそうした証明をする書類を持っていったり,サインをとりにまた大学に帰ったり,数度,店と大学を往復して,やっと携帯電話を手にしました.いずれにしても,フィンランド人の教授が店員に一喝すると,あっという間に契約が成立するのを見て,どこの国も同じようなものだな,と感じた次第です.
携帯電話のメーカーはNOKIAを始め,Ericson, Motorola, Siemens, Philips, さらにはPanasonic, Sonyまで多種多様です.しかしながら,私が会った人の90%がNOKIAでした.誰に聞いてもNOKIAを薦めます.理由はフィンランド製だから,という何とも理由なのかどうなのかわからない返事が帰ってきます.もちろん,NOKIAのサービスステーションはフィンランドのあらゆる都市にありますが,Motorolaなどはほとんどありません.最後に,Ericsonだけは薦めない,と言われました.なぜならそれはスウェーデン製だからだそうです.半分冗談でしょうけど,残りの半分は本気のようです.フィンランドとスウェーデンの関係を象徴しているような出来事でした.